映画鑑賞記「この世界の片隅に」

公開日 2016年12月07日

この世界の片隅に

監督:片渕須直 
原作:こうの史代
製作年:2016年
製作国:日本
上映時間:126分
     

すず、という一人の少女の、昭和8年から終戦までの時代を描いた作品だ。

すずは広島市に生まれ、(広島県)呉市に嫁ぐ。
自分でもいうように、ぼーっとした愛すべき少女だ。
すずの描く絵は、のびやかであるけれど、すずの住む世界はとても小さい。
「こんまい」すずが、その小さい世界で、でも精いっぱい生きている。
井戸に水を汲みに行く、小さい畑を耕す、道の雑草を摘んでおかずにする、毎日かまどで炊くごはん、たらいでする洗濯・・・
つらいこともあり、でも楽しいこともある小さな小さな毎日。
あの時代の、きっと当たり前の毎日。
がまんすることが美徳であるとは思わないけれど、その小さい世界は美しくさえ見える。

そして、世界はこんな小さいことの集まりでできているのだ、と思う。
人々の小さな一生懸命でこの世の中はできていて、それは決して侵してはいけないものなのだ。
だから、それを平気で踏みにじるものには私たちは断固として立ち向かわなければならない、反対していかなければならない。
優しい絵柄で、いや優しい絵柄ゆえになお一層そんな強いメッセージを残す作品だ。

プロモーションの量が少なくて、もしかするとあまり知られていない作品なのかもしれないけれど、
瀧くんと三葉もいいけれど、それよりももっとたくさんの人に観てもらいたい。

 

2016.12.3鑑賞 by K.T