映画鑑賞記「明日になれば~アフガニスタン、女たちの決断~」

公開日 2022年05月27日

明日になれば~アフガニスタン、女たちの決断~

原題:Hava, Maryam, Ayesha
製作:2019年/アフガニスタン・イラン・フランス合作
監督:サハラ・カリミ

アフガニスタンの首都カブールで、臨月のハヴァは、認知症の義母と召使以下の扱いをする義父、思いやりのかけらもない夫にこき使われている。高学歴でテレビのニュースキャスターとして活躍しているミリアムは、結婚直後から7年もの間浮気をしていた夫との離婚を決意したところで妊娠に気が付いた。ティーンエージャーのアイーシャは、婚約の日に浮かない表情だ。彼女たちのそれぞれの苦悩は、彼女たちをある場所に引き寄せた。。。


アフガニスタンというと、ついついブルカで覆われた女性や、自爆テロ、というイメージばかりが浮かぶ。本作も、タイトルから、権利を奪われ抑圧された、わたしたちからすれば特殊な女性の話なのかと思っていたのだけれど、そうではなかった。

確かに、家族の縛りや従兄弟との結婚など、風習の違いは描かれているが、意地の悪い舅やDV夫、浮気ばかりの夫や、甘い言葉に騙されてしまう女の子は、日本でもどこでもあることだし、彼女たちが選択しなければならなかったこともまた、悲しいけれど、特殊なことではなく、「よく知らない宗教のよく知らない国」で起きている他人事ではない。広く女性全体が持つディスアドバンテージを感じさせられた。

邦題は「明日になれば〜アフガニスタン、女たちの決断」。

ただ、耐えていれば、時間が経てば、「明日になれば」この世界が変わっていくだろうということではなく、自分たちが決断して変えていかなければいけないのだ。それは、監督から、未だ因習に縛られるアフガニスタンの女性たちへのメッセージであるとともに、彼女たちよりも恵まれている社会状況下で立ち止まってしまっている私たちに対しても向けられたメッセージだ。そしてまた、このアフガニスタンの状況を遠いところの関係のないこととして捉えないでほしいというメッセージでもある

しかし、そんなメッセージも、今は虚しく響く。本作は、2019年製作。2001年のカルザイ政権発足から徐々に女性の権利が認められてきていたが、2021年にはアメリカ軍が撤退。そして再びタリバンが政権を取った。監督(+脚本)のサハラ・カリミもカブール陥落直後に国外に脱出を余儀なくされたという。

今のアフガニスタンの女性たちがどのような状況になっているのか、冒頭の美しいカブールの景色とともに鑑賞後には誰もが考えさせられるに違いない。

2022.5.23鑑賞 by K.T