公開日 2015年11月03日
監督:エリック・ラルティゴ
原題:La famille Belier
製作年:2014年
製作国:フランス
上映時間:105分
これは一人の少女の旅立ちの物語であり、親が子どもをいかに手離すかという物語。
どの家族でも子離れはあるものだが、この家族がちょっと違うのは、少女以外(両親と弟)は聴覚に障がいがあるということ。
聴覚に障がい、といっても、この家族はそんなことを全く感じさせない。
ママはとってもおしゃべり(手話で)で陽気、パパもアグレッシブで前向きだし、弟はエッチなことに興味津津の中学生(たぶん)。
でもやっぱり、病院での診察や商売といった状況ではただひとり聞くこと話すことができる主人公のポーラが彼らの耳となり声となっているのだ。
ストーリーはといえば、
ポーラが、学校の音楽の授業で歌の楽しさを知り、また歌の才能を見いだされ、家から離れて音楽の教育を受けたいと思うというところから展開する。
歌を聴くことができない両親には彼女の才能はわかることができないし、
ポーラがいなくなっては、他の人と会話することも難しい。
何より、今まで家族四人で生きてきたのに、離れるなんて・・・絶対反対!!
さて、その両親がどう変わっていくのか・・・
父親が耳が聞こえない自分たちがわかることができなかった娘の才能を感じ、彼女の思いを知っていくその過程に胸を掴まれずにはいられない。
そして、どの映画評も絶賛する最後の歌!
ハンカチ必携!!
ただ、難を言えば、私としては、ちょっとこの母親にひっかかる。
子どもへの愛と依存をはき違えているよな~と。
そこのところが解消されていたら、もっと満足できたかも。でもそれをしなかったから出来過ぎにならなかったということも言えるかも?
映画のオープニングは、農場の早朝の音~鳥の声、牛の声、それから
家のさまざまな音~トイレや朝ごはんの準備・・・から始まり、私たちに聴覚というものを意識させ、
また、(聴覚の障がいといっても一様ではないだろうが)この両親に音がどういうふうに聞こえるのか、逆に音ではないものがどう感じられるのかが少しわかるような気にさせてくれる場面もある。
映画を見てモノを知った気になるのは正しいことではないけれど、気づきのきっかけとなるのは悪いことではないはず。そんなところにもこの作品の意味があるのでは?と思う。
(2015.10.31鑑賞 by K.T.)