公開日 2016年08月18日
原題 Er ist wieder da
製作年:2015年
製作国:ドイツ
上映時間 116分
2012年に原作となる小説が出版され話題となりました。
本作品は、原作よりも強烈な印象で、映像の力の凄さ、映像を力にすることの凄さに背筋が寒くなります。
また、そのために、作品に込めたメッセージも強くなっていると言えます。
あのアドルフ・ヒトラーが突然現代に蘇った。
モノマネ芸人として注目されるが、本人はただ自説を主張しているだけ。
芸人として観ていたはずなのに、人々は彼にどんどん惹きこまれていく・・・
本作は、
アドルフ・ヒトラーを街に連れ出し、一般の人との関わりを撮影するという、ドキュメンタリーのような手法を取っている場面がメインです。
観光地や、地方に現れたヒトラーのそっくりさんに、大概の人が大喜びし、写真を撮ったりハグしたり。当然、嫌悪感を露わにする人もいますが。
それだけだったら怖くないのです。歴史上の超有名人ですから<喜ぶ>という反応は(本物なわけないのだし!)自然です。
ただ彼はその場所に顔を出すというだけではなくて、パブや集会の場でヒトラーに成りきって(ヤヤコシイですね・・・本当は役者さんが演じているのだし)、人々と政治や社会の問題について会話をします。
お笑い芸人相手だからこそ、人々は本音を言いだします。生活のこと、移民のこと、難民のこと・・・・
これが過激で怖いのです。あれは皆冗談ではなくて本気です。
もし、このような不満を抱えた多くの人々の前に、今本当にヒトラーのような人が出てきたとしたらどうなるのかと想像させられ、ぞっとします。
そもそも、ヒトラー(本物)が主張していたことの中には、全体ではなくて<そこだけ>を取れば、そしてドイツ国民<だけ>のためだったら「正しい!」と思ってしまうようなことが結構ありますよね。、
アメリカではトランプ氏が大統領候補となり、イギリスの国民投票でEU離脱に過半数の票が入ったというタイミングでもあり、ただのコメディだと片づけられない気持ちになりますよ。
「選んだ国民の責任は?」と問われたら・・・。
ラストは、原作小説よりもストレートに批判的な表現で、それまで気持ちがざわざわしていた私はちょっとホッとしました。
笑えるところもたくさんあって、そこもモチロン楽しめますよ。
原作を既読の方にもオススメです。
2016年6月26日鑑賞 K.T.