公開日 2016年10月22日
監督/脚本 ハニ・アブ=アサド
原題 Ya Tayr El Tayer (The Idol)
製作年 2015年
製作国 パレスチナ
上映時間 98分
イスラエルのガザ地区に住むムハマンド・アッサーフという青年が、「アラブ・アイドル」というテレビ番組で優勝したという実話の映画化です。
2013年のことで、YouTubeでも当時の映像が見られるし、結果はわかっているのだけれど、「ムハマンド、頑張って!!!」と、ドキドキしますよ。(ちなみに、映画に出ている俳優より本人のほうがずっとイケメンです)
子どものころから歌がうまく、姉と友人とでバンドを組んで歌っていたムハマンド・アッサーフ。
青年になってからはつらい現実の世界でただ生きているだけであったが、「あなたは歌で世界を変えるのよ!」という姉の言葉を思い出し、「アラブ・アイドル」に出場というチャンスに挑む・・・
オーディションに参加することはもちろん、ガザから会場のあるエジプトに入国することですら難しい中、歌の力が人の心を動かし、扉が開いていく。
こんなふうにあらすじを書いてしまうと、よくある「夢に向かって一直線!」的な話、で終わってしまいそうですが、彼らが住んでいるのはイスラエルのガザ。パレスチナ人自治区です。
人々は、出入国も自由にできず、イスラエルという国の中のガザという小さなエリアにパレスチナ人が閉じ込められているといってもいいでしょう。
彼らの子ども時代は、おそらくガザ紛争の前で、塀で囲われてはいるものの、まだ今のような状況ではなく、エジプトとの地下トンネルを使ってマックの配達をする、というエピソードがあったりしましたが、今は、そのトンネルもエジプト政府によって破壊されています。
映画では実際の映像も流れますが、彼が勝ち進んでいくことがどれだけガザの人たちの希望であったのか!!
一人の青年(少年)の夢ではなく、全てのパレスチナ人の夢が叶った瞬間のようでした。
ムハマンドは歌で世界を変えたのか?
彼は現在国連パレスチナ難民救済事業機関青年大使として世界を飛び回っているそうですが、映画のテロップでは、世界のどの国でも行けるようになったけれど、故郷のガザには自由に行くことはできないとか。
また、この映画の後の時代にはガザの空爆がありました。
でもきっと、歌は世界を変えられる、そう信じたいです。そう信じよう!と思わせてくれる作品です。
ところで、これから観るという方へ。
ムハマンドが歌うシーンは、少年時代からいくつも流れ、どの歌もとても素敵なのですが、アラビア語なので全く意味がわかりません。なぜ字幕を出してくれないのかな、と皆さんも感じると思うのですが、、「アラブ・アイドル」で最後に歌う歌だけに字幕がつきます。今までついていなかったために更にこの歌詞がぐっと胸に響きますよ。
9月25日鑑賞 by K.T