公開日 2017年11月10日
監督:マット・リーブス
原題:War for the Planet of the Apes
製作年:2017年
製作国:アメリカ
上映時間:140分
「猿の惑星」は当初から、人種差別や、社会体制、核武装など、時代時代の社会問題を問うた作品群であるが、本作でも、今現在のこの不寛容さが増していく世界が抱える様々な面が表現されている。
シーザーをリーダーとするエイプの集団は、北米の森の奥地で、人間の攻撃に備えながらも平和に暮らしている。
しかし、更に安全な土地への移動を翌日に控えた夜、シーザーを殺害し、エイプを無力化しようとする人間の大佐率いる軍隊に襲撃され、シーザーは妻と息子を殺害されてしまう。復讐のために仲間たちから離れ、復讐のために大佐を追ったシーザーは、自分だけでなく仲間たちも捕えられてしまうことに・・・ここからシーザーの最後の戦いが始まる。
まずは、どこからがCGなのかがわからないほどの映像の素晴らしさに驚く。
モーションキャプチャーから一段階進んだパフォーマンスキャプチャーという技術を利用してのシーザー役のアンディ・サーキスの演技は、よく言われるように主演男優賞を取ってもおかしくない。
そのアンディ・サーキスの名演(目だけでの表現!)もあり、私たちはエイプのリーダーであると同時に家族の父親でもあり、愛と憎しみ、内面の葛藤と為すべきことの間で苦悩するシーザーの魅力に圧倒されてしまう。私たちは人間である大佐を憎み、エイプであるシーザーたちの勝利(戦闘に勝利するということではない)を応援せずにはいられないのだ。
しかし、私が特に印象的だったのは、大佐がシーザーに対して「(エイプの知能が人間を上回ったとしたら)身体能力が圧倒的に劣る人類は征服されてしまう(のは当然だ)」と語った言葉だ。
闘い、奪い、制圧するという歴史を繰り返し、この世のトップだと思ってきた人間には、それ以外の道があることがわからない。多様性を受け入れることができずに、ただただ恐怖で、その元を消すことしか考えられない。それは現代の、宗教や人種、性、その他様々なことに対する不寛容性を想起させるとともに、そうとしか思考できない大佐(=大佐に象徴される人間)が哀れでもある。
そのほか、ノヴァの持つ役割や、ウイルスの持つ意味など、いろいろ考えることのできる作品ではあるが、もちろん、エイプたちのカッコよさや、子どものエイプの可愛さも大きな魅力だ。
また、「地獄の黙示録」へのオマージュがちりばめられているので、これも観ているとなおいいかも。面倒な作品だけど。
2017年10月14日鑑賞 by K.T