映画鑑賞記「人生はシネマティック!」

公開日 2017年11月27日

 
監督:ロネ・シェルフィグ 
原題:Their Finest
上映時間:117分
製作年:2016年
製作国:イギリス
配給 キノフィルムズ
 
 
第二次世界大戦下の英国、国民の国威を発揚するための映画が作られている。今回、政府が要求したのは、そこに「信憑性と楽観」を兼ね備えた作品だ。そんな無茶な要求に応えるため、脚本家のバックリーがスカウトしたのは、コピーライターの秘書をしていたカトリン・コール。彼女の才能を得て、様々な難題を越えて、映画製作が進んでいく・・・
 
劇中に製作されるのは、ダンケルクを舞台にした作品だ。
クリストファー・ノーランの「ダンケルク」もまだ記憶に新しく、「もうひとつのダンケルク」と宣伝されてもいたが、あちらがリアリティを追求したのに対し、こちらは、観客が喜ぶ(人生の2時間を捧げる価値がある)映画をどう作るか、ということを描き、しかも、その中に、フェミニズム、生き方、生と死、などを軽妙なセリフとウイットで織り交ぜた物語になっている。
 
誰かの息子が、夫が、恋人が、孫が戦地に行く中で、「意味がある死などない」という言葉は重く響く。それは、死が無意味ということではなく、だからこそ自分が持つ今の時間を精一杯生きるべきだということにほかならない。そして、その、貴重な時間のうちの2時間を捧げる価値のある作品を作りたいと願う映画の作り手たちの想いが胸を熱くさせる。といっても、それがイギリス映画らしい皮肉や、やりとりで表現されているのが、とても魅力的だ。
 
人々が映画を愛するのは、そこにある死や出来事にプロットがあり、意味があり、構成されているからだーというセリフに大きく頷いた。そしてできれば、映画でぐらいはハッピーエンドがいい。
 
さて、この映画はハッピーエンドか?
少なくとも、アメリカ的では、ない。
 
映画が好きならきっと楽しめる作品だ。
ビル・ナイが素敵なので、他作品で気になっていた方は是非!
 
2017.11.25鑑賞 by K.T