映画鑑賞記「はじめてのおもてなし」

公開日 2018年01月29日

はじめてのおもてなし

監督:サイモン・バーホーベン
原題:Willkommen bei den Hartmanns
製作年:2016年
製作国:ドイツ

富裕なドイツ人家庭が、一人の難民を受け入れる。自分の老いを認められない外科医の夫、孤独からワインが手放せない妻、バツイチの息子は子どもをほったらかしのワーカホリックで、娘は30過ぎても自分探し中の大学生。そんな彼らが、ナイジェリア難民のディエロとの出会いで変わっていく…

ドイツは、様々な問題が起こってはいるが難民の受け入れに積極的な国だ。作品中の「ドイツは自由と寛容の国だ。それを犯そうとするものとは、国外でも国内でも、右だろうと左だろうと、ISだろうとナチだろうと、戦わなくてはならない」という(ような)セリフに、なるほどと、大きく頷いた。

といっても、本作は、難民問題の映画、というわけではなく、難民の受け入れをきっかけとした、家族の再生、人生の気づきというものが中心になっている。

西欧の価値観の呪縛~いつまでも若々しくあることが良いとか、経済的社会的な成功をしなくてはならないのは負けだとか~そういうことに囚われてしまっているところからの解放の物語だ。そしてさらにそこに、難民移民の問題、差別の問題が、さらりと、ユーモアを散りばめて描かれていてる。拒絶や抵抗ではなく、受容することでもたらされるものの大きさを感じさせる。

マダム・アンゲリカは、難民を受け入れたことで周りに起こる騒動から、自国がISに占領された夢を見る。彼女が、「こんな悪夢を見た。」とディエロに告げると、「僕も同じ夢を見たんだよ。だから逃げてきたんだ」とディエロが答えるのが印象的だ。

現実とは隔たりがあるだろうが、程よいところに着地した、心温まる良作だ。

2018年1月27日鑑賞 by K.T