映画鑑賞記「クワイエット・プレイス」

公開日 2018年10月25日

クワイエット・プレイス

監督:ジョン・クラシンスキー 
原題:A Quiet Place
製作年:2018年
製作国:アメリカ


宇宙から来た、音に反応するモンスターに人類はほぼ捕食され尽くした。が、その中で生き残った家族もいる。
彼らは裸足でそっと歩き、手話で会話をし、様々な生活の工夫を凝らしてひっそりと1年以上を過ごしていた。そんな家族に事件が・・・


モンスターに襲われない方法はただ一つ、「音を立てない」こと。逆に、それさえ守れば生き抜ける。
という設定なので、映画は静かに進行するのだが、その緊張感が映画館全体に広がってくるのが本作鑑賞の特徴だ。

ホラー映画は、もちろん「襲われる」のが前提で、緊張感があって当たり前なのだけれど、そもそも、その緊張感は期待感、というか、アミューズメントパークに行くような気持と近いのではないかと私は思っている。けれども、本作は、日々の生活の様子がていねいに描かれることと、静寂の中でもたらされることで、あの「緊張感」とは別種の、もっと身近で、体を締め付けるような緊張感になっている。

そしてまた、従来のホラーとは一線を画すのが、恐怖を描いているというより、家族のつながりを描いていることだ。
このような状況下でも淡々と過ごす当たり前の毎日の生活。その生活の中で、心に傷を抱えつつ思春期に差し掛かる娘と父親の葛藤や、喪失をそっと抱える母親・・・それらにどう向き合っていくのか・・・
終末のように見える異常な世界の中に、人としていつの世も変わらないものがあることが、観客をこの世界に引き入れる大きな要素にもなっていると思う。

突っ込みどころはいろいろあるのだけれど(その状況でそれはないでしょう!みたいなものも含め)、まあそれはいったん置いておいて、あのひりひりするような緊張感を味わってもらいたい。

お約束のようなシーンもいくつもあって、でもわかっていながら「ヒーッ!」となり、でもでも絶対声を上げられない気持ちになっているので、登場人物を同じように力いっぱい口を押えていたり・・・
映画終了直後、ゴホゴホと咳をしながら「上映中はガマンしたよ・・・」と言っている人がいたけれど、いやもうほんと、観ているほうもゼッタイ音は立てられない気持ちになってしまう。

音を立てると即死系(!)では、「ドント・ブリーズ」も緊張感はあったけれど、その緊張感とも違うし、本作のほうが心地いい(?)緊張感だ。(まあ、あれはオチがちょっと気持ち悪すぎだったし)

2018.10.21鑑賞 by K.T