公開日 2020年01月30日
監督:サフィ・ネブー
製作:2019年/フランス
原題:Celle que vous croyez
50代の大学教授であり、2児の母でもあるクレールは、長く連れ添った夫と離婚し、息子ほどの歳のボーイフレンドと付き合っていたが、その彼が急に距離を置いてきた。彼の様子を知ることができれば・・・という気持ちからSNSを使ってまずは彼の友人に近づいたクレール。
名前と年齢を、さらには写真を偽り、交流を続けるうちに、ネット上での恋愛へと進み、その関係にどんどんはまっていってしまう・・・
ベッドシーンから始まり、さらに若いボーイフレンドに執着するクレールに対して、どうにも感情移入ができず、「若さにこだわりすぎなのでは・・・」とか、「子どもだっているのに・・・」、「まったくフランス人はいくつになっても・・・」と、まずは批判的な気持ちばかりが浮かんだ。虚構の人物と自分との境がなくなり、のめりこんでいくその姿は満ち足りて見えるからこそ愚かに哀れで滑稽ですらある。
しかしやがて、彼女がなぜその女性になりすましたのか、彼女がそうなってしまった理由がわかると、それが切なさに変わる。喪失によってできた空洞は同じものでしか埋めることができない、といったのは誰だっただろうか。
人は年とともにさまざまなものを失っていく。それを淡々と受け入れることができるのは、支えてくれる何かがあるからなのかもしれない。
と、そんなことも考えさせられたが、本作の魅力は、「サイコロジカル・サスペンス」と宣伝されている、その作りにある。
精神科医とのセッションとして話が進んでいくのだが、彼女がどういう状況で、どういう経緯でこのセッションを受けているのか。そして、それがわかったあとで、さらに・・・・この驚きをクレール役のジュリエット・ビノシュの名演技とともにぜひ楽しんでもらいたい。
2021年1月19日鑑賞 by K.T