映画鑑賞記「ファヒム パリが見た奇跡」

公開日 2020年08月29日

 
監督 ピエール=フランソワ・マルタン=ラヴァル
原題 Fahim
製作年 2019年
製作国 フランス
上映時間 107分

 

チェスの天才であるがゆえに故国バングラデシュから逃れなければならなくなった少年ファヒム。
父親と二人でフランスに渡り、チェスの全国大会を目指す。 ファヒムは順調にチェスの才能を伸ばしていくが、父親が申請していた難民の認定は通らず、このままでは強制送還されることに・・・

よくできたお伽話に思える。でも、これは実話。

ファヒムの、人としての成長の物語であり、さらにそこにバングラデシュという国の現状、フランスの移民政策、フランスに馴染んで行く子どもと馴染めない親との溝、その父親の苦悩…そしてもちろん、ファヒムのチェスの勝負がどうなるのか、というドキドキといった様々な要素がギュッと詰め込まれている。

それが魅力でもあり、ギュッと詰め込まれたために、言葉足らず、というか、もっとそこを詳しく!とも思ってしまったのは事実。

けれども、フランス移民の話とというと「レ・ミゼラブル」(ミュージカルじゃないほう)のような殺伐としたものがまず浮かぶけれど、これは、周りの子どもたちが、施設の子もチェスクラブの子も、偏見もなくまっすぐないい子たちで、友だちっていいなあ、と温かい気持ちになれる。 不寛容なことばかりが目に付く今の社会で、子どもたちだけでなくチェスの先生やチェスクラブのオーナーも、苦境に立たされているファヒム親子を支えようする姿を見られたのは、まだまだこの社会も悪くないよね、と思わせてくれる幸せな時間だった。

2019.8.14鑑賞 by K.T