映画鑑賞記「ニューヨーク 親切なロシア料理店」

公開日 2021年01月27日

ニューヨーク 親切なロシア料理店

原題:THE KINDNESS OF STRANGERS
製作:2019デンマーク,カナダ,スウェーデン,フランス,ドイツ,イギリス,アメリカ
上映時間:115分
監督/脚本:ロネ・シェルフィグ

夫のDVから逃れてニューヨークに来たクララと二人の息子。あてもなく、お金も泊るところも食べるものもなく気力をどんどん失っていく。
そんな彼女たちが途方に暮れてふと入り込んだのは、やる気のなさそうなオーナーやワケありのマネージャーがいるロシア料理店で・・・。


不器用で、この社会で生きにくさを抱えている人たちが、偶然の出会いからお互いを支えあい、前に歩き出すころができるようになるという心温まる群像劇だ。

すごいことをするわけでもすごいことを起こすわけわけでもなく、ちょっとした好意やちょっとした手助けが人を前に進めさせる。その大げさでないところが本作の大きな魅力であり、そのささやかな人の温かさと出来事が、ささやからだからこそ余計にぐっとくる。

ストーリーの中心は、子どもを抱えて行き場を失っているクララになるのだけれど、人を助けずにはいられないために擦り減ってしまったような看護師のアリスも、不器用にもほどがあるジェフも、口下手がすぎる弁護士も、誰もが愛すべきキャラクターで、目が離せない。アリスが言う「どうしてみんな他人にそんなに意地悪なの?」というセリフが、今だからこそ余計にとても心に残った。少しの親切。それがなにかしらきっと役に立つし、それだったらできるんじゃない?鑑賞後、温かい気持ちとともにそんなメッセージを受け取った。

状況としてはシリアスな事態が描かれているのだけれど、そこに「ああ、これ!」という伏線回収(?)もあったり、クスっと笑える余裕を入れてあるのがまた素敵だ。厳しいシチュエーションの中でホッとさせてくれるのがロシア料理店であり、そこのオーナー役のビル・ナイ。ホッとするだけでなく、彼が出てくると雰囲気がぐっと上がるのだ。要注目です(単に私が好きなだけかも・・・)。オファーがあった際には、彼は「セリフが2、3のウエイター役」だったようなのだが、彼なしでは考えられない!本作でビル・ナイが気になった方は、「ラブ・アクチュアリー」や「アバウト・タイム 愛おしい時間について」をご覧になるのもいいですが、「パレードへようこそ」をぜひ!LGBTをテーマにしたこの作品はビル・ナイも素敵ですが、作品自体もとってもおすすめです。

2021年1月25日鑑賞 by K.T