公開日 2021年02月26日
監督:エリア・スレイマン
製作:フランス・カタール・ドイツ・カナダ・トルコ・パレスチナ合作/2019年/102分/G/
原題:It Must Be Heaven
配給:アルバトロス・フィルム、クロックワークス
ストーリーを説明するとすれば、「パレスチナ人監督が自作をパリ、ニューヨークに売り込みに行く」ということになるらしいけれど、それはわりとどうでもいいのかも。
ナザレの教会の行事のハプニングから始まり、監督であり主演(?)のスレイマンの自宅や近所での出来事、映画を売り込みに行くパリとニューヨークでの様々なエピソードを経て、帰国するという体の作品だ。
セリフらしいセリフ(特にスレイマンの)はほとんどなく、空気感というか色というか、乾いた映像が美しいのがとても印象的だった。「絵葉書を眺めるようだ」という感想を見たが、確かに、ひとつひとつの場面が美しく、その美しい風景というか情景を眺めて楽しむ作品、という観方もできるし、ブラックユーモアも含めた可笑しさを楽しむこともできるし、そしてもちろんイスラエルーパレスチナを考える映画として観ることもできる。
スレイマン監督は
もし過去の私の映画作品が、パレスチナを世界の縮図として描くことを目指していたなら、
『天国にちがいない』は、世界をパレスチナの縮図として提示しようとしている。
とコメントしているが、そんなしゃちこばったことというより、自分たちのことが見えず、イスラエルーパレスチナの国のことが目に入っていない私たちのために作られた「あなたのところはこんなで、私の国はこんなカンジだよ~」という例え話を見ているような気になった。
レモンの木、パリでの戦車、ニューヨークのスーパーマーケット、天使の羽をつけた女性・・・風変わりな場面のすべてが、きっとイスラエル-パレスチナのリアルな姿でありその象徴なのだと思うと、その深さとその表現に感じ入るものがある。イスラエルーパレスチナ問題についての新しい切り口であり、新しい問題提起のやり方だ(テルアビブ・オン・ファイアも新しかったけど)。
場面場面を深読みしようとするとどんどんできる作品なので、鑑賞後に語り合うのも楽しいと思う。
我が家は夫と私と別々に鑑賞して、双方でかなり違う感想を持ちました。みなさんがどう思われたか、とても興味があります。
2012.2.12鑑賞 by K.T