公開日 2021年11月26日
監督:春本雄二郎
製作:2020年/日本
152分
ドキュメンタリー監督の由宇子は3年前に起きた女子高生の自殺事件の真相を追う取材と撮影を続けていた。そんな中、高校生向けの塾を経営している父の大きな過ちを知る。常に真実を追求することを信条としてきた由布子はそのときどうするのか・・・
正しさとは何か、を問う作品ではある。何に、そして誰にとって「正しい」のか。正しいのは正義なのか、正義は「正しい」のか?
主人公の由宇子は、真実を報道することを信条としているドキュメンタリー監督だ。しかし、彼女が追い求める「真実」は、彼女が描きたい「真実」で彼女の物差しでの「正しさ」であり、それは傲慢で、他人事であり冷たくもある。彼女の天秤は、常にその彼女の「正しさ」が基準なのだが、それが自分ごととなった時に激しく揺れ動くのだ。
観客は、冒頭の彼女の天秤に違和感を覚えつつ、ストーリーが進むにつれ、揺れる由宇子をみながら、自分だったらどう選択するか、何が正解なのか、と考えさせられる。私たち自身の天秤が揺れ動き、私たち自身が持つ正しさの判断が問われることになる。ネットいじめや報道のあり方の問題、また、貧困などの問題も内包しつつ、途中、「え!」と驚く展開がいくつもあり、152分の上映時間の長さを感じさせないどころか鑑賞後も心を離れない。
人の中の曖昧さ、弱さに対して冷酷にスマホカメラを向けていた由宇子。最後にそのカメラに向かって彼女は何を語ったのか、是非皆さんの意見も伺いたいです。
2021.11.19鑑賞 by K.T