公開日 2022年01月28日
ドライブ・マイ・カー
製作:2021年・日本 179分
監督:濱口竜介
原作:村上春樹
舞台俳優であり、演出家の家福は、脚本家である妻・音と仲睦まじく暮らしていた。妻が不倫していることを知っても気づかないふりをしていたが、その妻が「話したいことがある」といったまま死んでしまった。2年後、演出家に専念していた家福は、ある演劇祭で演出をすることになり、そこで寡黙なドライバー・みさきと出会う。みさきとの交流、「ワーニャ伯父さん」の舞台稽古を通じて家福は自ら封印していたものを知る。
私は村上春樹の小説が苦手だ。
なのでもちろん大して読んでもいないし、ファンの方には、「何もわかっていない!」と怒られてしまうだろうけれど、暴力とセックスの描写が多用されて、似たようなワールドが展開されているという印象で、今度こそは!と思って読むと「やれやれ」な気持ちになってしまう。
だから評価が高い本作の鑑賞も迷っていたし(179分もあるし!)、「観ないことには『つまらない』ともいえない」程度の気持ちで映画館へ向かった。そして、つまらないはず、という気持ちは見事に裏切られた。
これが村上春樹らしくないのかと言えば、いかにも村上春樹(私の持っているイメージだけれど)であって、でも手法が、映画でしかできえないようなものなのだ。
チェーホフの「ワーニャ伯父さん」の舞台に重ねられていく言葉と情景、意味を失った言葉たちと抑制される感情、単調なトーンを作る色彩、それらが繰り返される前半は退屈にも感じる。正直「例の、よくある、小さなことをもったいぶって表現するヤツ?」と思いながら見ていたのだけれど、その画面が動き出す終盤近くになって、前半のつくりの意味と価値がわかる。そして映画が終わったときには、この作品の脚本と構成の巧みさに、驚き、感動した。
そう、大きすぎる喪失に向き合うには、経なければならないことがあるのだ。
この感情は、映画館で没入しなければ多分味わえなかった。食わず嫌いせずに観に行って本当に良かった。。。。
2022年1月25日鑑賞 by K.T