公開日 2023年09月18日
三鷹市芸術文化センターでは、9月から1か月おきに、「CINEMA SPECIAL 料理が心を結ぶ映画特集」と題し、料理に関連する映画が上映されます。
今回は、その第1回、9月23日(土)上映の映画「かもめ食堂」について!
かもめ食堂
製作:2005年/日本/102分
劇場公開:2006年
監督:荻上直子
サチエはフィンランドの首都ヘルシンキに、小さな食堂を開店した。一か月経っても一人も客が来ないような店だったが、一人、また一人と、何かを心に抱えた人たちが集まりだす・・・
これといったストーリーはない。
そして、なぜサチエが一人でヘルシンキで食堂を開こうと思ったのかははっきり語られないし、ミドリやマサコがヘルシンキに来ることになった背景もわかったようなわからないような・・・ただ彼らには深刻な事情があったであろうことは想像するに難くない。
そんな気配を見ている私たちに想像させつつも、画面のサチエはただ、淡々と、ていねいに生活する。店に一人も客が来なくても、毎日机を拭き、グラスを磨き、プールで泳いで、寝る前に膝行を欠かさず・・・
そんな姿に励まされる。
どんなにつらいときも厳しいときも、ていねいにその日その日を過ごしていくことの大切さみたいなものをしみじみと感じさせる。
そして、さらに励ましてくれるのが、美しい料理の数々!
焼きたてのシナモンロール、そして、普通の白ごはんや、肉じゃが、サクサクのとんかつ・・・
特別な料理ではなくて良くて、ていねいに作られたいつもの料理が心の栄養になるのだ。
朝起きて、おいしいごはんを食べて、寝る。
大切なのは、生きるというのはそういうことだと、あらためて思わされる。観終わったあとに、肩の力がすっと抜けるような気持ちになれる作品だ。
疲れているときに特にオススメですが、くれぐれも、おなかを空かせた状態で観ない方がいいですよー!
余談1
本作のフードスタイリストは飯島奈美。24年1月芸術文化センターで上映の「南極料理人」でも料理を担当しています。荻上直子監督作品だけでなく、いろいろな作品にフードスタイリストとして関係しているほか、レシピ本も多数。荻上直子監督作品「川っぺりムコリッタ」での地味ごはんもとってもおいしそうでした。
余談2
フィンランドで食べ物の映画、といえば「世界で一番しあわせな食堂」も料理が人をつなぐ、心温まる作品。こちらは中華薬膳料理です。
K.T