三鷹ゆかりの映画監督 「Jホラーの父」鶴田法男さん(映画監督)登場

公開日 2015年01月21日

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私、映画監督の鶴田法男と申します。「夏の風物詩」と呼ばれ全国の子供たちの8割が見ている稲垣吾郎がホストのテレビ『ほんとにあった怖い話』や、世界を席巻した『リン

グ』シリーズ3作目で仲間由紀恵の映画初主演作『リング0~バースデイ~』、そして楳図かずお漫画の実写映画化、木村佳乃、中越典子、谷村美月が出演した『おろち』などを手がけています。

写真 『おろち』撮影中の鶴田法男監督とスタッフ

 

 三鷹オスカー閉館から20年、三鷹コミュニティシネマ映画祭へ


 さて、ここのエッセイには私の実兄も寄稿しておりますが、実は1990年まで私の父が「三鷹オスカー」という名画座を三鷹駅南口で経営していたのです。閉館するまでの10年間は兄が番組編成を担当して父と一緒に劇場を支えておりました。「三鷹オスカー」と聞いても、もはやご存知の方も少ないでしょう。しかし、かつては東京の名画座の中で五本指に入る存在でした。人気だった理由は他の劇場が週替わり二本立てなのに対し、うちは週替わり三本立てで、料金は一般1,100円、学生800円(閉館時)、しかも毎週、フェリーニ特集、小津安二郎特集、トム・クルーズ特集などとテーマを持った三本立てを組んでいたからでした。しかし、1990年12月30日に三鷹オスカーは三鷹駅前の再開発に伴って閉館しました。

三鷹オスカー閉館の夜

 

ところが、それから約20年を経た2009年に三鷹オスカーのような映画館を復活させたいと願っている三鷹市民の方々が多数いらっしゃり、その実現のために映画祭を開催するので協力を願えないだろうかと市の第三セクター、㈱まちづくり三鷹から連絡をいただいたのです。結果、毎年晩秋に開催されている「三鷹コミュニティシネマ映画祭」に兄と共にスーパーバイザーとして関わる事になり、こちらのサイトから原稿依頼も受けました。時代も世代も超えて人々を結びつけていく映画の力にあらためて感動し、励まされる思いがしております。
三鷹コミュニティシネマ映画祭HP:http://cinema.mall.mitaka.ne.jp/





※写真 三鷹オスカー閉館の夜 1990年12月30日(撮影:中村琢磨氏)


映像ドラマ撮影の難しさ~ロケ地探し~

 さて、兄は映画を上映する仕事に就いたのですが、私は映画やテレビドラマを作る仕事に就きました。兄のエッセイには映画上映の難しさが記されていますので、私は映像ドラマの撮影の難しさをちょっぴり記したいと思います。

 ご存じのように映像ドラマは一人では作れず様々な方々の協力が必要です。さて、そんな多くの人々が関わる作品作りにおいて一番必要な存在はなんでしょうか? 私のような監督でしょうか? それともカメラやそれを操るカメラマンでしょうか? もちろんそれらも大切ですが、映像ドラマにまず必要なのは撮影対象です。それが無ければ監督やスタッフが揃ってカメラや

鶴田法男3ライトがあっても何も写りません。撮影対象は役者ばかりでなく役者が立つ舞台、つまり家やビルの建物内、街や公園などこの世界の全ての空間が映像ドラマの舞台になります。ですが、どこでも舞台になるわけでもありません。ほとんどの映像ドラマにはシナリオや台本と呼ばれる設計図がありそれを基に撮影されるからです。この台本に合ったロケ場所を見つけるのが非常に大変なのです。例えば、一人暮らしをする貧乏男子大学生が主人公の物語ならば、かなりくたびれた安アパートを探さないとなりません。また、主人公が菓子パンを買ってそれを食べながら友だちと会話を交わす、と台本に書かれていれば協力してくれるパン屋さんを探し、その店舗の前の道路の撮影許可を管轄の警察などにもらわないとなりません。さらに台本には何も指定はされていないけど、監督やカメラマンがこのシーンは風光明媚な風景の中で撮りたいとイメージすればそれ相応の場所を探さないとなりません。そうやって台本の一つ一つのシーン毎にそれに見合った舞台で撮影しなければならないので映像ドラマは非常に手間がかかるのです。しかし、それらが綺麗にはまったときは優れた作品が完成します。そして、その作品と共にロケ場所が多くの人々の心に残っていきます。

 例えば、高倉健さんの遺作映画『あなたへ』のロケ地となったことで兵庫県の竹田城跡は一躍人気の名所になりました。また大ヒットしたテレビドラマ『半沢直樹』の大阪の各ロケ地も多くの人々が訪れる人気スポットになりました。竹田城跡は人気が出過ぎて問題も起きているようですが、人気の無い観光地からすれば贅沢な悩みでしょう。

 映像ドラマの撮影というのは一般の方が考える以上の人数が関わり、様々な機材があり、想像以上の長い時間を要して撮影が行われます。ですから、撮影許可をしてくださったのにロケ隊が来ると戸惑ってしまう方もいらっしゃいます。また、映画やテレビドラマのロケ地となったから必ず竹田城跡のように一気に人気が出るとは限りません。ですが、映画やテレビのロケ場所となったことで活性化したり、多くの人が住みたいと思うようになった街は全国に多数あります。ですから、三鷹市にも「三鷹フィルムコミッション」が本格的に立ち上がりましたので、三鷹の街の皆さんに是非ご協力いただければと願ってやみません。それをお伝えして失礼します。

 

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写真上 『おろち」ロケ場所 (福島県・天鏡閣)
写真下・左 『ほんとにあった怖い話/15周年スペシャル』内1話  『犯人は誰だ』ロケ場所(東京都・江東区)
写真下・右 『ほんとにあった怖い話/15周年スペシャル』内1話  『S銅山の女』ロケ場所(埼玉県)

鶴田法男さん プロフィール

鶴田法男氏映画監督、テレビ演出、作家。1960年、東京生まれ。和光大学卒。祖父は『ガメラ』や『座頭市』シリーズなどを生んだ映画会社・大映(現・消滅)の取締役、父は名画座「三鷹オスカー」('90年閉館)を経営する映画一家に生まれる。映画配給会社ギャガなどに勤務後、脱サラして監督に。'91~'92年に発表したビデオ『ほんとにあった怖い話』シリーズが後の世界的ヒット映画『リング』、『呪怨』に多大な影響を与えた事から“Jホラーの先駆者”、“Jホラーの父”と呼ばれる。
また、『ほんとにあった怖い話』はフジテレビでドラマ化されて「夏の風物詩」と呼ばれる国民的ホラー番組になっている。現在は「三鷹コミュニティシネマ映画祭」のスーパーバイザーとしても活動。
その他の代表作、映画『リング0~バー
スデイ~』、『おろち』、『POV~呪われたフィルム~』、『Z~ゼット~果てなき希望』など。

 

 

ポスタービジュアルsmall 三鷹オスカー閉館時のチラシ(表)三鷹オスカー閉館時のチラシ(裏)

映画『おろち』(ポスター撮影:蟻川実花) 三鷹オスカー閉館時のチラシ(表) 三鷹オスカー閉館時のチラシ(裏)