映画鑑賞記「To Leslie トゥ・レスリー」

公開日 2023年07月21日

To Leslie トゥ・レスリー

原題:To Leslie
製作:2022年/アメリカ/119分

シングルマザーのレスリーは、宝くじで19万ドル賞金を手に入れるが、酒に使い果たしてしまった。故郷からも息子からも逃げ出していた彼女は、行き場を失いホームレス同然となってもアルコールを絶つことができず、友人にも息子にも見放される。そのようなときに偶然出会ったモーテルの従業員との関わりが彼女の人生を変えていく

レスリーのダメっぷりがすごい。
ホームレスのような状態からやっと息子のところに転がり込めたというのに、舌の根が乾かないうちからまたお酒に手を出し・・・

でも、そのダメっぷりがあるから、最後は思わず涙がこぼれてしまうのだ。

レスリーの背景は語られないが、境遇も生活も楽ではなかったことは想像される。宝くじに当たり、今まで経験したことのない幸運に有頂天になり、きっと周りもお金目当てにすり寄ってきたであろう。

そしてお金がなくなったときの全ての空白。依存症になるのも仕方ないことだ。

バーで声をかけてきた男に「私をいい人だと言って。最低な人間じゃないと言って」と酒を飲まずに訴える姿に、彼女の心のその空白が見えてくる。

WHOは、飲酒により健康に何らかの問題がある場合を「アルコール使用障害」と定義。
このうち仕事や家庭よりも飲酒を優先させるようになる依存症は世界で推計1億4400万人で、成人人口の2.6%。日本は1.1%で、米国7.7%だそうだ。

そう、アルコール依存症は病気だ。そして依存症は、快感を求めるためではなく、つらさを忘れるため、どうしようもない心の穴や闇を塞ぐために陥ってしまうものだという。

それに向き合い、その穴を埋めるものを見つけだしたとき、人は立ち直ることができる。
強い人間だけができるのではなく、誰でもが、時に揺れながらも立ち直ることができるのだと、レスリーは教えてくれる。

まあでも、正面から「私だって辛いのよ」とか「私は病気よ」とか言われると、振り回された周り(息子)はどうなのよ!と思ってしまうけど。

それにしても、バーで「セット」というものがビールと蒸留酒(テキーラ?)のセットだとは・・・ちょっと日本とはレベルが違う?

2023.6.25鑑賞 by K.T