映画鑑賞記「南極料理人」

公開日 2023年11月27日

三鷹市芸術文化センターでは、9月から1か月おきに、「CINEMA SPECIAL 料理が心を結ぶ映画特集」と題し、料理に関連する映画が上映されています。
今回は、その第3回、2024年1月27日(土)上映の映画「南極料理人」について!

南極料理人

製作:2009年/125分/日本
劇場公開日:2009年8月8日
配給:東京テアトル
監督・脚本:沖田修一

予期せず(!)南極観測隊の調理担当となった西村。生き物どころかウィルスも生存できない極寒の地で、8人の個性溢れる隊員の過酷な1年間をおいしい食事で支えることに・・・

丁寧に作られた、お刺身、天ぷら、鰤の照り焼き。氷に閉じ込められた極地とは思えない、美味しそうな和食が並ぶ夕飯。炊き立てのツヤツヤのご飯で握るおむすびは、当たりの具がイクラで、熱々の豚汁とともに、極寒の中での作業の合間の楽しみな昼食だ。

そんな美味しそうな料理から始まる本作は、昭和基地より寒い「ドームふじ基地」で1年ちょっとを閉じ込められて過ごす9人の、私たちには想像できないような生活の様子を描いている。

隊員たちはそれぞれ個性的で、「え?」というようなユニークなエピソード満載なのだが、(どれぐらい事実に則しているかは置いておいて)これが実話ベースだというから、なお面白い。

学生の合宿のようにも見える生活だったが、白夜が始まり、外に出られなくなってからは、隊員たちもだんだんおかしく(?)なってくる。でも、そんな皆を繋ぎ止めるのは、やっぱり食べ物なのだ!

西村の料理も、冒頭の繊細なものから、豪快なものになっていく。それは、「料理人」であることより、「仲間」となっていった変化なのだろう。当初、鰤の照り焼きに醤油をドバドバかけられて顔色を変えていたのが、後には皆がただがっつくのを見て実に嬉しそうになるという変化が、「食べる」ことの意味を伝えているようにも感じた。

飯島奈美がフードスタイリストに名を連ねる料理の数々はもちろん飯テロレベルだけれど、それ以上に、極地での生活、そして、隊員それぞれが、抜群に興味深く、面白いですよ!

K.T