映画鑑賞記「最高の花婿」

公開日 2016年05月01日

最高の花婿

監督フィリップ・ドゥ・ショーブロン 製
原題    Qu'est-ce qu'on a fait au Bon Dieu?
製作年    2013年
製作国    フランス
上映時間    97分

あなたは人種で差別をしますか?と聞かれたら、おそらく大部分の人が「しない」と答えるのではないでしょうか?
それは別にいいことを言おうというのではなく、人種で差別するのは正しいことではないと、本当に思っているからでしょう。
そもそも人種とは何なのか?とか、国籍とは何か?とか。
たとえば、スポーツの場面で「日本代表」とか「横綱」とか、そんなの生まれたところがどこかとか関係ないし~と思いますよね?

でも!
本当に本当に心の底からそう思っているのでしょうか?

そんなことをコメディの形で突きつけてくれるのがこの作品です。

フランスの、ロワール地方(いわるゆ美しいフランスの田舎)でそこそこの名士のヴェルヌイユ家の美人4人娘は、次々とユダヤ人、アラブ人、中国人と結婚してしまいます。
敬虔なカトリックであるヴェルヌイユ夫人は、ずっと通っているカトリックの教会で娘の結婚式を挙げるという夢がかなえられないまま・・・
でも、娘の幸せを祈って、祝福しよう、うまくやっていこうとがんばりますが、でもでも(特にヴェルヌイユ氏は)ど~しても人種へのこだわりが捨てられないのです。
ユダヤ人、アラブ人、中国人、といっても、婿になった彼らは移民2世で、フランス語も勿論ネイティブですし、フランス国家も唄えますよ。
けれど、カトリックではないし、それぞれのルーツの宗教や習慣は保っています。
そんな彼らを愛する娘の婿としてなんとか受け入れなければ・・・いや、無理かも・・・ああ、でも最後に残った末娘はきっと自分たちの望み通りの人と結婚してくれるはず・・・と思っていたところ、
彼女が結婚しようと思ったのは、カトリックという条件はクリアしたものの、コートジボワール出身の青年だった・・・

シビアな話だと思うのですが、コメディという手法でとても受け入れやすくした監督の手腕が、まずはすばらしいです。
人種によって差別するのはおかしい思っているのに、ユダヤ人は・・・アラブ人は・・・中国人は・・・という「小さな差別」をそれぞれ皆がお互いに持っている。
もちろん、日本人は~とかアメリカ人は~とかもですよね。人は人にレッテルを貼っているものなのです。
フランス人が~という一方的なものではなく、そこのところもしっかり描かれているので、頷くばかりです。
そういう偏りは、誰でもが、どの国民・人種に対してみな等しくあること、でも、個人個人を知ればそうではないと理解できることなのだ、と思わせてくれる作品です。
そしてまた、自分が気がついていなかった「偏見」についても考える機会をくれます。

まあでも、もし、婿の中に日本人がいて、辛辣な表現をされていたら、冷静に見られなかったかもしれません(汗)
それも偏見で、そういうことを思った、ということも気づきのひとつです。

フランスは、地理的だけではなく歴史的にも移民が多いことは当然のことです(もちろんフランスだけではありませんが)。
そういうことも、この映画を機会にもう一度考えてみるのもいいですね。

ハッピーエンドになることがわかっているので、ブラックなところも大笑いして、気付きをもらい、幸せな気持ちで映画館をでることができる作品です。


横ですが、ちょっと違ったフランス人と(不法)移民の映画として
ル・アーブルの靴磨き」 
オススメです。監督はフィンランド人ですが。。。

2016.4.1鑑賞 by K.T.

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