映画鑑賞記「スポットライト 世紀のスクープ」

公開日 2016年05月29日

スポットライト 世紀のスクープ

監督:トム・マッカーシー
原題:Spotlight
製作年:2015年
製作国:アメリカ
上映時間:128分
 
2016年米アカデミー賞作品、脚本賞受賞の本作はとても真面目で、地味な作品。
それゆえに、作り手の真剣さ、問題の大きさがずっしりと伝わってくる作品です。

カトリックの聖職者たちが行っていた大規模な児童に対する性的虐待の事実をボストン最大の新聞社、ボストン・グローブ紙・スポットライト欄チームが明らかにしていくというストーリー。

事実に基づいていることもあり、余計な盛り上がりとかドラマドラマしたところがないのが、とても良い(事実自体は衝撃ですが)です。
取材と調査を重ね、カトリック教会という巨大な組織が長年に渡って隠してきたことをひとつずつ紐解いていく…これがジャーナリストの仕事なのだな、と思いました。

エンドクレジットに、この記事をきっかけに虐待があった国と聖職者の名前が出るのですが、そのあまりの数の多さにぞっとします。
この記事がなかったら、今も増え続けていたのかと思うと…作品の中の「じゃあ公表しなかった責任は誰がとるのですか?」といセリフの重みが増します。

地方ではなく、ボストンという大都市での、カトリック教会の力の大きさ、地域のコミュニティの結び付きの強さ、それだからこその閉鎖性(大都市なのに!)なども興味深く、
また、このテーマを持ち出したのが、ユダヤ人である新編集長(ボストン生まれでない)であったこと、虐待をした聖職者が自分も受けたとさらりと言うくだりなども考えさせられます。

子どもたちのような<弱い者>を自分たちのいいようにするということは、「カトリック教会」だからというのではなく、私たちの周りでもあり得ます。それを見過ごさない人間でありたいと思います。

5/10鑑賞 K.T.