映画鑑賞記「わたしは、ダニエル・ブレイク」

公開日 2017年04月28日

わたしは、ダニエル・ブレイク

監督 : ケン・ローチ 
原題 : I, Daniel Blake
製作年 : 2016年
製作国 : イギリス・フランス・ベルギー合作

 

ダニエル・ブレイクは心臓の病気のため、医者から仕事をすることを禁じられた。そのために正当な支援を受けようとするのだが、的外れといえるマニュアル通りの対応に振り回される。
その中でも2人の子どもを持つシングルマザーを助け、彼女らとのかかわりが始まるのだが、現実は、ダニエルにも彼女にもますます厳しいものであった・・・


ケ・ンローチは怒っている。真面目に生きている人々が正しく扱われない社会について。

ダニエルは、施しが欲しいのではない。一市民として、普通に正しくあろうとしているだけだ。要領よく立ち回れば得られるものを、正直に向き合ったために、得られない…そんな社会システムがあっていいのか?弱者を救済する意図が感じられないこんなシステムが当たり前のこととして存在する社会でいいのか?
そう、ケン・ローチは怒っている。

支援に認定のためのインタビューから、ジョブセンターでの係員との面談まで、全てが笑えない冗談のようなやり取りだ。ダニエルの人としての正しさが踏みにじられることに心が凍りつくような中で、2人の子どもを持つシングルマザーのケイティや、隣人のアフリカ系青年たちとの関わりが、生きて行くのも悪くないと思わせてくれるのが救いだ。

翻って、私たちの国はどうなのだろうか。
人を一人ひとりの人として扱うことができている社会であってほしい。


2016年・第69回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞。

 

2019年3月26日鑑賞  by K.T