映画鑑賞記「ディストピア パンドラの少女」

公開日 2017年07月26日

ディストピア  パンドラの少女

監督:コーム・マッカーシー 
原題:The Girl with All the Gifts
製作年:2016年
製作国:イギリス・アメリカ合作
上映時間:111分

独房の中にいる少女。
兵士が乱暴にドアを開け、従順な少女を車いすに固定して移動させる。
移動先には、同じ年ごろの少年少女たちの車いすが並び、普通の学校の授業が始まる・・・

そのような場面から始まるこの作品。
この子たちは何者なのか、一体世界がどうなっているのか、この不安を是非予備知識なしで味わってもらいたい。

おおざっぱにこの作品をジャンル分けするとすれば、ゾンビもの、ということになるだろう。
確かにゾンビ作品は、政治や社会問題、環境問題などへの批判を含むものも多いのだが、本作は、ただゾンビが闇雲に、生きている人間を襲い、その結果人類が滅亡へと向かう従来のゾンビ作品と違い、生物の淘汰~進化~を描いており、そして、その「生物」を「文明」や「国」に置き換えることで、現代社会への問題提起となっているのだ。そういう意味では、ゾンビは二次的な存在であると言える。ゾンビ(ハングリーズ)の集団の襲撃はもちろん怖いけれど、それよりも、ハングリーズはモンスターではなく、どんな存在もただ生き延びることを望んでいるだけで、その結果どれかが淘汰されたとしても抗うことができないと感じさせられる描写に背筋が寒くなる。

コアなゾンビ作品ファンには物足りないかもしれないが、今までのゾンビものでは、ゾンビ化の原因がはっきり描かれなかったり、「?」というような理由のものが多かったと思うのだけれど、本作は、タイワンアリタケの突然変異種に寄生されたことによる、とハッキリしていること、「ショッピングモールに代表されるような、ある特定のところに集まる」という習性に明確な目的があるということなど、従来のゾンビ作品の「お約束」にきっちり理由がつけられているところも、私には面白かった!

(7月1日鑑賞 by K.T)