映画鑑賞記「ダンケルク」

公開日 2017年09月30日

監督:クリストファー・ノーラン
原題:Dunkirk
製作年:2017年
製作国:アメリカ
上映時間:106分
 
ダンケルクからの撤退作戦、ダイナモ作戦を舞台とした本作は、戦争を描いたと言うより、戦争そのものが主人公の作品だと言える。観客は、色を抑えた映像、無限音階を使った音楽、そして無駄なセリフのない緊張感で張り詰めた106分を、観るのではなく体験するのだ。
 
1940年5月末、ドイツ軍によって英仏連合軍40万人がダンケルクに追い詰められてしまう。イギリスの首相ウィンストン・チャーチルは、彼らに対し、戦うのではなく、撤退するという命令を下す。 海岸と桟橋で、無防備で助けを待つ連合軍をドイツ空軍が空爆し、刻々とドイ陸軍が包囲を狭めるなか、海から、空から、彼らを救う作戦が動き出す・・・
 
ダンケルクという土地で助けを待つ兵士(陸)と、イギリス本土から彼らを救いにくる船(海)、空爆から兵士を守る戦闘機(空)、の三つの時間、つまり、陸での1週間、海での1日、戦闘機での1時間が同時に描かれており、それらが最後に収束するところが、とても面白い。
 
でもそれよりも何よりも。
今までも戦場や戦争が主役であるような戦争映画はもちろんあったけれど、それでも、それらの作品には感情を移入するべき主人公がいた。
しかし、本作の陸(したがって一番時間が長い)の主人公と呼べる位置にいる若い兵士は全くそうではないのだ。彼は銃撃から逃げる間に仲間が倒れても構わず逃げる。ほぼセリフもなく、背景にも全く触れられない。けれども、戦場とはそういうものなのだということを大きなリアリティをもって納得することができるし、またそれだからこそ、観客はこの兵士になってこの戦場を体感してしまうのだ。
 
そしてまた、そこに、海の時間と空の時間があることで、この作品の厚さが増す。
 
鑑賞後、宣伝文句通り、「戦場に放り込まれた」という感覚になる(溺れかかったような気持に・・・)。これは新しい映画体験だ。そして、戦って死ぬのではなく、生きて帰ることこそが勝利だという強いメッセージも受け取りたい。
 
私は2Dで観てしまったけれど、できれば、3DやIMAXなどでの鑑賞がオススメ。
 
9月9日鑑賞 by K.T

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