映画鑑賞記「否定と肯定」

公開日 2017年12月27日

否定と肯定

監督:ミック・ジャクソン
原題:Denial
製作年:2016年
製作国:イギリス・アメリカ合作
上映時間:110分

ホロコーストはなかったと主張する歴史家アーヴィングを自著の中で手厳しく批判したユダヤ人歴史学者リップシュタットは、アーヴィングから名誉棄損で訴えられる。アーヴィングの主張が看過できないリップシュタットは、裁判での対決を決意する。 その裁判は、名誉棄損云々というより、法廷という場で、ホロコーストがあったことは真実だと証明するというものとなった。

実話に基づくストーリーで、原作(リップシュタット著)もあり、また、2000年に英国で行われたこの裁判について、それから、アーヴィングがその後どうしていたかについてもウィキペデイアでも見られる。なので、結果もわかっているし、地味な作品ではあるが、考えさせられるところがあった。

エンターテイメントとしてならば、このトンデモ論を声高に主張する憎々しいアーヴィング(ティモシー・スポールの好演!)をリップシュタットがガンガンやりこめてスッキリ!・・・という話になるべきだが、本作ではそうはならない(実話だからしょうがないけれど)。
リップシュタットの弁護団は、やる気満々の彼女に沈黙を求め、生存者の証言も認めない。

いくら明らかな事実があったとしても、偏った考えの持ち主と、同じ土俵に立つことは無意味なのである。

彼が主張しているのは真実ではなく、自分が信じたいこと。彼が心から信じているその主張は彼にとっての真実となっていて、その誤りを正面から正すなんてことはできないのだ。

身近な歴史修正主義や、ヘイトスピーチ、またそれだけではなく、SNSなどでも見られる様々な人たちの狂信的ともいえる主張に対する態度として、ストンと納得できたような気になった。

人は、知らず知らずに見たいもの、信じたいものを選んでいる。
それを自覚すること、そして、正しいものを見ようという姿勢を持つこと、教育の中でも培って行くべき力なのだろうと思う。

2017.12.10 鑑賞 by K.T

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