映画鑑賞記「CURED キュアード」

公開日 2020年03月26日

CURED キュアード


監督:デビッド・フレイン
製作:2017年/アイルランド・フランス合作
原題:The Cured
95分

メイズというウイルスによってゾンビ化した人々に襲われたアイルランド。
ついにメイズ感染者を治癒する薬が見つかった。感染者の75%が治癒し普通の人間としての生活に戻れる。
しかし、彼らが食い殺した人々はもちろん戻らず、そしてまた、自分たちがゾンビであったときの記憶は鮮明に残ったままなのだった。


以前にも、ゾンビ映画は、ゾンビという人でないものを道具としながら、現代の問題を顕わにしようとしていると書いたと思うけれど、本作もそういう作品だ。
本作は2017年製作で、製作者は移民排斥問題を念頭に置いていたようだが、新型コロナウイルスで世界が震撼している今の公開とは、なんともタイムリーだ。
新型コロナウイルスのようなものでさえ、客船から下船して自宅に帰った人々が偏った目で見られたり差別されたりしているという報道がある。私たちはなんと自分勝手なのか・・・。

それがゾンビになるようなウイルスだったとしたら?

ソンビになりながらも自分の意志を持ったり、またはそれに目覚めたり、人を愛することを見つけたり、というような作品は以前にもあるが、治癒してゾンビから人間に戻ったというのは、新しい視点だ。

ソンビになったときを記憶している感染者はこう言う。自分のものではない体に押し込められ、人を喰いたいという衝動(そのときの本能)に必死に抵抗したと。そして、本能に負けて身を任せてしまったときが、なによりも最悪の気持ちだと・・・

けれど、社会はそんな感染者の苦しみを推し量ることができるだろうか。私たちは、それは彼らのせいではないのだと、もうすべては済んだことなのだと受け入れることができるだろうか。

誤解を恐れずに言うならば、これはハンセン病患者や、エイズ患者といったような病気に対する偏見について問うているともいえるし、また、犯罪を犯して罪を償った人々を赦せるだろうか、と問われていると考えることもできる。製作されたのが、英国と複雑な歴史を持つアイルランドだということもあり、ハッピーエンドとは言い難い結末も、私たちに様々なことを考える機会を与えてくれる良作だ。

ホラー映画ではなく、社会派映画だ、とおススメしたいのだが、でもゾンビ映画らしいシーンもあるし、耐性がない方にはコワすぎるかもしれない。でもでも、それでもコワいところにはちょっと目をつぶって、ウイルスとは関係のない人の怖さとか、アダルトチルドレン的な問題とか、やっぱり無条件で人を愛する美しさとか、そういうものも味わえる本作をぜひ見ていただきたいと思う。

2020年3月21日鑑賞 by K.T

ところで、これを書いている間に、東京都知事が週末の不要不急の外出を控えるようにと会見したという話を見た。週末に映画館にいくことは憚られるかもしれないので、家でこんなときに鑑賞するのによいのでは?と思う作品をひとつ。これはゾンビ関係なく、未知のウイルスのパンデミックの話です。

コンテイジョン
監督:スティーブン・ソダーバーグ
製作:2011年/アメリカ
原題:Contagion
配給:ワーナー・ブラザース映画
106分