映画鑑賞記「AWAKE アウェイク」

公開日 2020年12月28日

AWAKE アウェイク

監督:山田篤宏
製作国:日本
上映時間:119分

小学生のときに奨励会の門をくぐった清田英一。同年齢の浅川陸と切磋琢磨していたが、やがて陸は期待されるプロ棋士に。英一は将棋をあきらめ、普通の大学生活を始めていた。 生きる目標も見つけられない英一は、ふとしたことでコンピューター将棋と出会い、そのソフト開発にのめりこんでいく。彼が開発した将棋ソフト「AWAKE」はコンピューター将棋大会で優勝し、プロ棋士との対局「電王戦」へと駒を進める。そこでの対局相手はあの浅川陸だった・・・

胸アツの青春物語だった。

私は、コンピューター将棋や電王戦のことはもちろん、将棋そのものの知識が全くなかったのだけれど、そのようなことは関係なく、 今までの人生のすべてを失うような挫折から、もう一度目標を見つけ立ち上がっていく物語に胸が熱くなった。

誰でも、夢を諦める場面はあるし挫折もあるけれど、捧げてきたものが、努力の割合が大きければ大きいほど、もう一度立ち上がることは容易ではない。 小さいころから、周りからは天才と言われ、自分でも上手くなることが楽しくて、努力を重ねてもっと上をもっと上をと目指して・・・でもそうやってトップオブザトップになれるのはほんの一握り。 それはもちろん将棋や囲碁、チェスなどの世界だけのことではなく、スポーツでも「蜜蜂と遠雷」で描かれたような音楽などでも同じこと。 それだけをやってきたというのに、途中であきらめざるを得なかった人たちがどれだけいることか・・・あらためてそのドラマを感じさせるとともに、それらの人々がいるからこその、プロとしてのプレッシャーもよく描けている作品だった。

対局終了後に見せる英一の表情と、陸の対照的な表情に、その全てが語られているように感じた。

奨励会で彼らを指導していた棋士の、彼らに対する視線の温かさも素敵だ。その温かさを受けてのラストシーンもまた良い。対局後の英一の表情と、このラストと、二度うるっとなりました・・・。

もし(私のように)この電王戦の結果を知らない方がいたら(=将棋にあまりに興味がないということだけれど)、ぜひ、結果を調べずに、そして、将棋の知識がないことをためらわずに映画館に足を運ぶことをお勧めします。 そして、結果を知っている方も、「ああ、あれね」と思わずフィクションとして見に行かれることをお勧めします。少年が青年となり、ひとつ成長するという、ありがちだけれども胸が熱くなる、そして気持ちのいい作品です。

2020年は、新型コロナの影響で、ハリウッドの大作が次々と上映延期になったため、地味だけれども良い作品に出会う機会が多くなりました。 今年は皆さんはどういう作品に出会いましたか? 来年も心震える映画に出会えることを祈りつつ楽しみにしたいと思います。今年もお付き合いありがとうございました。

2020年12月26日鑑賞 by K.T