映画鑑賞記「ボイリング・ポイント 沸騰」

公開日 2022年07月26日

ボイリング・ポイント 沸騰

原題:Boiling Point
製作:2021年/イギリス/95分
監督:フィリップ・バランティーニ

クリスマス前の金曜日、ロンドンの人気レストランは、開店前から不穏な雰囲気。食品衛生の点検が入っている上に、家庭のトラブルを抱えたシェフは遅刻しどこか心ここにあらず。発注やらも手が回っていない様子。予約でいっぱいの今夜は無事に乗り切れるのだろうか。。。

ボイリングポイント=沸点に向かってそれぞれの不満や感情が徐々に高まっていく状況に、観ている私たちもどんどん緊張が高まっていく。そんな体験を楽しむ作品かもしれない。

その緊張感を作っているのは、内容ももちろんだけれど、本作は一つの失敗も許されない、ノーカット、ワンテイクで撮られた95分間だということだ!

飲食店で働いたことがある人なら経験したことがあるだろう、忙しさとともに高まっていく厨房のスタッフの苛立ち、ワガママな客や現場無視の支配人、そして、プライベートと仕事のトラブルで徐々に追い詰められていく主役のシェフ・・・誰かが(誰もが)何かやらかしてしまいそうで、しかもそうなったらもう立て直せなさそうな店の状況と、そして実際に何か、誰かが一つミスをしたら作品が壊れてしまうということも相まって、観ているほうのヒリヒリとした緊張感が続く。。。正直、映画の内容としては素晴らしいというほどのものではないけれど、登場人物の小さくはあるが様々なエピソードをぎゅっと凝縮し、この短時間にまとめてワンカットで見せたということだけを観る価値が十分にあると思う。しかも、これはスタジオではなく、実際のレストランを使って撮影している。どれほどのリハーサルを重ね、準備をしたことか・・・メイキングがあれば是非見てみたい!

ところで、一晩のレストランを舞台にして、忙しい厨房の様子がある映画といえば「ディナーラッシュ」。こちらはもちろんワンカットではなくて、おいしそうな料理も出てきます。ジャンルとしては犯罪映画ですが、面白いですよ!

2022.7.25鑑賞 by K.T