映画鑑賞記「空気殺人」

公開日 2022年09月27日

空気殺人

製作:2022年/韓国/108分
原題:Air Murder
監督:チョ・ヨンソン

大学病院の医師テフンの息子が急に意識を失った。その入院直後、今度は妻が自宅で急死。原因は二人とも同じ重篤な肺疾患だった。妻の肺の異常はごく短期間で起こったことだとわかり、独自に調査を始めたテフンと義妹ヨンジュは、同じ状況が多数の人におよび、そして皆同じ加湿器用の殺菌剤を使用していたことを突き止めた。テフンとヨンジュは、被害者団体とともに製造販売をしているオーツー社の責任を追及するべく裁判を起こす。

2011年に実際に韓国で起こった事件をもとに制作された作品だ。もととなった事件は、大企業が隠蔽し、政府の対応が遅れ、多くの被害者を出したことから「家の中のセウォル号事件」とも呼ばれているそうだ。

他の国では認可されなかったこの殺菌剤によってもたらされた事態には、背筋が寒くなる。作品中に日本の水俣病が引き合いに出されるセリフがあるが、この事件は2011年。ついこの間だ。もちろんこれはドキュメンタリーではない映画作品なので、スクリーンの中で起こっていることはすべてが事実ではない。けれども、実際の被害者の全貌は明らかになっていないということ、こういうことが実際にあったというのは、しっかりと覚えておかなければいけないことだ。

本作は、「空気殺人」という強いワードから思い描くような進み方ではなく、実は前半私はちょっと拍子抜けだった。サスペンス要素はありながら法廷ものであり、しかもその法廷も(これが実際に近いかどうかはわからないが)今まで見知った法廷と少し違い、「前官礼遇」だとか、なんだかモヤモヤするし、その裁判の結果も・・・となったたところでの展開が!さすがの韓国エンターテイメント映画作品だった!

企業の社長が逮捕される、というのは、予想の範囲だけれど、エ!そこに!そんなウラが!そういえば、あのときのあのセリフも、裏仕事をしそうな服装も・・・・・と、散りばめられていた伏線が見終わってからもあれこれ頭に浮かび、事実ベースであるだけに、ともすれば単純な話になってしまうこの作品を韓国作品らしい面白さに仕上げたことに感心した。そして、そう仕上げられたことで、この事実は監督の意図通りに広く記憶されるもとなるのだ。

2022.9.23鑑賞 by K.T

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