映画鑑賞記「よりそう花ゝ」

公開日 2023年01月28日

よりそう花ゝ
2019年製作/103分/韓国
原題:Paper Flower


下半身不随となり自暴自棄の息子ジヒョクと二人暮らしのソンギル。営んでいる葬儀屋の仕事は大手に負け、家賃の支払いもままならない。そんな彼らの隣に明るい母子ウンソクとノウルが引っ越してきた。誰もがさじを投げていた息子の介護の仕事をウンソクが買って出、彼女らとの関わりで、ジヒョクもそしてソンギルの心も開かれていった。
大手との提携で仕事も安定してきたソンギルだが、昔気質の彼には葬儀の在り方に納得がいかないことも。そんなある日、身銭を切って路上生活者を支援していた男性の葬儀をしない火葬をソンギルが担当することに・・・

2008年「おくりびと」という、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した日本映画があった。納棺師という仕事を通じて成長していく姿を美しい所作とともに見せてくれた作品だった。本作も、亡くなった人を丁寧に送り出す様子が描かれる。なかなか目にしない異国の情景が興味深いが、その様子は温かく美しい。

現在日本でも、葬儀の簡素化が進んでいる。少人数の家族葬というだけでなく、火葬場への直葬、そしてまた、コロナのために最後のお別れがしたくてもできない、という状況もあった。葬儀について、改めて考える機会が増えたように思う。しかし、たとえば「孤独死」などについては葬儀までなかなか考えが及ばない。

「死」は「生」とともにある。

尊厳をもって送り出すことは亡くなった人の生き方を振り返ること、そこに生きていたことを認めることに他ならない。

そして「死」は貧富の差なく、平等に訪れる。映画の終盤で語られる「紙の花」の話からも、誰もが等しく送り出されるということができる社会でなくてはならないと強く思わされた。誰もが等しく送り出される社会は、誰もが生きられる社会でもあるのだ。

ジヒョクとソンギルの過去、そしてウンソクの顔の傷などが少しずつ明らかになっていく後半では、「生」が強く意識される。「死」は必ず訪れるのだからそれまでは精一杯、なんとかでも生きていくべきなのだと。

静かだが、あたたかく心に染み入る作品だ。

2023.1.21鑑賞 by K.T

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